ヨーロッパ

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中世ヨーロッパでは、印章指輪に紋章を描くという慣習が生まれた。ヨーロッパの紋章は、およそ十〜十二世紀ごろ出現しているが、その起源は騎士が頭からすっぽりとヘルメットをかぶったため、視界が狭まり、敵味方を確認するために、楯に紋様を描いたことによる。その後、紋章は代々継承され、王侯貴族、個人、家系および共同体のシンボルとなっていく。したがって紋章っきの印章指輪は、紋章文化の発展と軌を一にしているが、これはシンボルとしてめ紋章、押印、指輪という三種類の役割を果たしているといえる。この紋章っき印章指輪は、王侯の権威のシンボルとして、また国家間の条約締結の際や貴族階級のみならず、ギルドの親方、さらに台頭してきた商人たちが、売買契約の際や商標としても用いていた。

日本は「ハンコ社会」でありながら、指輪文化が発達しなかったので、ハンコと指輪を結びつけるという発想は生まれなかった。ヨーロッパ現在ではサインの文化圏に入っているけれども、かつては契約社会であり、印章万能の時代があった。AU したがって、印章指輪がおどろくほど広範に用いられていたが、その理由は、識字能力のない者でも2容易に押印することができたからである。こうしてとくに十四世紀以降、イニシャルを彫り込んだ印章指輪が庶民のあいだにも普及し、十五〜十六世紀には名前を彫り込んだものへと移行し、印章指輪の全盛期をむかえるのである。

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